出無(デブ)キング

歳をとって、しわくちゃで。
はりも無くてむくむくで。
心にまで厚く皮をかぶり。
そんなわたしは言いたい。

わたしのことなんてもうほっといてくれ。

もう、外にも出ず。笑いもせず。眉毛も生えたい放題で。吹き出物だらけの顔で。過食症ごっこが趣味。
外も内もブスのわたし。
ここは誰からも傷つけられないわたしのシェルター。

どうせ誰のアンテナにも引っかからない。

なんて楽な人生なんだ。
なんて素敵な人生なんだ。
もうどうしていいのかわからないんだ。
別にどうする必要なんてないのかもしれないけど。
どこへ向かえばいいのかがわからないんだ。
正しいなんてない世界で。わたしのアイデンティティはいったいどこだ。

どこへ向かうのやら。
どこへ向かっていたのやら。
体の表面を覆う油が枯れてしまえば、わたしは真っ逆さまに水のなかへ沈んでしまうのだ。
これはただのスランプなのか。
それともわたしのターニングポイントとなるものなのか。
だいたいスランプだとか、ターニングポイントだとか、正しいものさえないのなら、それすら存在しないだろう。

壊しても壊しても
昔はだれかが直してくれていたのに。
今は、壊せば壊れっぱなし。
それは、嬉しい事なのか。壊したかったから壊したんだろう。それこそ、わたしの思い通りなんだろう。そうなんだろう。

君が話した少しの話を、わたしはいつまでも忘れたりはしないんだ。
わたしはきっとどうかしていたから。
自分にはなんだってできそうに自分を過信した。
こんな蟻以下の自分にできることなんて、せっかく持つ事ができた脳みその無駄づかい。

きっと神様だってそんなつもりじゃなかった。
もう少しわたしががんばるだろうって、きっと思ってた。
こんなに使えない人間に育つなんて想定外。
こんなに醜い人間に育つなんて想定外。
きっとわたしの最盛期は小学校2年の頃。
あんなに愛らしく、正義感の強い子は私くらいしかいなかった。
どうしてこんなにも、わたしは歳を重ねる事がへたくそなのだろう。

なんて楽なんだろう。
なんて素敵なんだろう。
わたしがこんな不平不満を世の中に垂れ流しても、もともときたない世の中だ。何も代わりはしない。
ここにはだれもいなくて、誰にも私は写らない。
わたしは透明人間か何かなのだろうか。

わたしが熊の首を絞めても
誰かを箱に閉じ込めても
誰もわたしを怒りはしない。

そうか。そうか。きっと私は透明なんだ。

だれにも見えない。
誰も煩わせない。

所詮人は一人で生きていた。
何をそんなに悲観しよう。
ただ、わたしがいいたいのは、そんなこんなの繰り返しにさえも、多分疲れた。


アトリエにあった寝室の絵の若葉色が妙にきれいで、
そういえば、昔もらったプリントの中に、緑にはいい言葉がたくさんふくまれていて。

きっとあのときわたしの目にあれが写ったのは、自分にない色だったから。

色を欲しい。
こんなにも苦しい。
こんなにも痛い。

今日だけは、わたしも言いたい。
なんでわたしばっかりいつもこうなんだろう。

世の中は、不公平だ。
世の中は、嘘ばっかりだ。
理想主義者め、死んでしまえ。

もうわたしはちぎれたくない。

わたしがいなくても、私のかわりなんていくらだっているじゃないか。
ほんとに、わたしのアイデンティティはどこにいってしまったんだ。


あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。


ピアノを、嫌そうに弾くと、続けさせてもらえなかった。
あれは、佐藤先生が、鍵盤を押しなさいといったからなのに。

いつまでもでてきそう。
垂れ流したい。
流しつくせば、わたしはきれいな空っぽになるのか。